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Misandry Blog

ミサンドリー(男性嫌悪)なブログです。

ミソジニーな社会を生き抜くために観るべき作品5選(上)

ドッカンドッカンの大爆笑

女性が憎くて憎くて仕方がないこじらせ男子。ドッグランのようにこじらせ男子が無邪気に駆け回るミソジニー女性嫌悪)な社会で、われわれ女性はどう生き抜くべきか。

憎悪に打ち勝ちたい女性におすすめの作品を5本選んでみました。

最初にご紹介するのはミュージカル映画プロデューサーズ』。

プロデューサーズ』は1968年に映画が作られました。監督・脚本はメル・ブルックス。それをもとにしたミュージカルが2001年にブロードウェイで上演。トニー賞史上最多の12部門受賞を果たしたこのミュージカルは、2005年に再び映画になります。(日本公開は2006年)。今回、ご紹介するのは2005年版の映画です。

『プロデューサー"ズ"』というタイトル通り、主人公は二人のプロデューサーです。

かつてはブロードウェイの王様だったものの、手がける作品は酷評続き、タキシードのレンタル代も払えないマックス・ビアリストック(ネイサン・レイン)。 

しがない会計士として働きながら、ブロードウェイのプロデューサーを夢見るレオ・ブルーム(マシュー・ブロデリック)。

ミュージカルはヒットさせるよりも大コケさせたほうが儲かる、というレオの発言をきっかけに、二人はブロードウェイで興行的な大失敗を目指します。

そして始まる皮肉の波状攻撃。

マックスとレオはユダヤ系です。その二人が金に目がくらんでいるとはいえ、ヒトラーを賞賛するミュージカルを嬉々として作ります。劇中劇のタイトルは『春の日のヒトラー』。

ナチスユダヤ人、ロマ人、精神障害者、同性愛者などを大量虐殺したことは『見た目は大人、頭脳は子供。その名は、藤沢数希!』で書きましたが、皮肉はこれだけではありません。

『春の日のヒトラー』で主役のヒトラーを演じるのは、中身がフェミニンなゲイの振付師、ロジャー・デ・ブリー(ゲイリー・ビーチ)。

ヒトラーを賞賛する作品かと思いきや、独裁者の中身は愛らしいジュディ・ガーランド。劇場はドッカンドッカンの大爆笑に包まれます。

わたしは『プロデューサーズ』を試写会で2回、映画館で1回観たんですが、劇中劇が繰り広げられる間はリアルな観客もドッカンドッカンの大爆笑でした。もちろん、劇中劇だけが笑いどころではありません。エンドクレジットが流れる間もボケ倒します。さながら吉本新喜劇。期待通りに展開する心地よさを味わえます。

そして、最大の皮肉は演じている役者の背景です。レオ役のマシュー・ブロデリックは実際にユダヤ系。マックス役のネイサン・レイン、ロジャー役のゲイリー・ビーチ、『春の日のヒトラー』で金髪碧眼の長身イケメン将校を演じたジョン・バロウマンはゲイです。

ネイサン・レインとゲイリー・ビーチはニューヨークでパートナーと同棲。ジョン・バロウマンは2013年にパートナーと結婚。

異常だから、キモいからという理由でナチスが虐殺した同性愛者が、ヒトラーやイケメン将校を演じる。

ヒトラーは理想的なアーリア人種を大量生産するために、長身で金髪碧眼の男女を強制的に結婚させました。ヒトラー自身も青い瞳の持ち主で、幼少時は金髪だったそうです。

優生学 - Wikipedia

アドルフ・ヒトラー - Wikipedia

わたしは常々、人類にとっての最強の武器は笑いではないかと思っています。核ミサイルや生物兵器であろうと、笑いの威力には勝てないと思っています。

独裁者が資金、権力、人手をつぎ込んで掌握しようとした人心を、笑いは一瞬でつかんでしまいます。その証左が『プロデューサーズ』です。

ミュージカル俳優がわらわら出演

続いてご紹介するのは海外ドラマ『glee/グリー』。

オハイオ州の片田舎にあるウィリアム・マッキンリー高校。教師のウィル・シュースター(マシュー・モリソン)はグリー(合唱)大会での優勝を目指し、部員を募集します。しかし、集まったのは揃いも揃って変わり者ばかり。グリークラブの運命やいかに。

世界中にgleek(gleegeek)と呼ばれるgleeヲタを生み出し、社会的な現象にまでなった『glee』。劇中で出演者が歌う往年の名曲、最新のヒット曲を収録したサントラは、3作連続全米アルバムチャート1位に輝いています。

ドラマが大ヒットした要因の一つは、マシュー・モリソン、レイチェル役のリア・ミシェルのように、ブロードウェイで活躍するミュージカル俳優がわらわら出演している点でしょう。『glee』は本場ブロードウェイの歌と踊りをお茶の間で楽しめるドラマなんです。

そして、このグリークラブには隙あらば廃部にしてやろうと目論む大敵、スー先生(ジェーン・リンチ)がいます。アメリカのマチズモ(男性優位主義)を象徴する存在が女性のスー先生。

ジェーン・リンチ犯罪心理学者の女性と結婚したのちに離婚しています。繰り返しますが、アメリカのマッチョなマチズモを象徴する存在がスー先生です。

また、製作総指揮のライアン・マーフィーがオープンリーゲイなので、『glee』には同性愛者の登場人物が多く出てきます。

たとえば、レイチェルの二人の父親(ジェフ・ゴールドブラム&ブライアン・ストークス・ミッチェル)、カート・ハメル(クリス・コルファー)、その恋人ブレイン・アンダーソン(ダレン・クリス)、サンタナ・ロペス(ナヤ・リヴェラ)、その恋人ブリトニー・S・ピアース(ヘザー・モリス)など。

しかし、オープンリーではないゲイには災いが降りかかります。カミングアウトする/しないは個人の自由だと思うんだけどな~。当事者ではないのでどうこう言えないんですが。

出演者にもオープンリーゲイが大勢います。

カート役のクリス・コルファーは『glee』出演中にカミングアウト。『アナと雪の女王』でクリストフの声を演じたジョナサン・グロフ(ジェシー・セントジェームズ役)はブロードウェイで活躍するオープンリーゲイ。アメフト部の女性コーチ、シャノン・ビースト役のドット・ジョーンズは2013年に女性と結婚。ブレインの兄役、マット・ボマーは3人の子供がパートナーの息子であることを2012年に公表(2011年に結婚)。名門グリークラブの顧問役、シャイアン・ジャクソンも2011年にパートナーと結婚。

あー、手が疲れた。マイノリティにとって生きやすい社会は女性にとっても生きやすい社会なんですが、日本人が寛容になるにはあとどれだけの年月が必要なんでしょう…。

ティーン向けのドラマである『glee』は、セクシュアリティ、宗教、人種、差別などの重いテーマを視聴者に噛み砕いてわかりやすく説明します。

たとえば、自他ともに認めるビッチのサンタナが、レズビアンだとオハイオ中に知られてしまった時。男子生徒が校内でサンタナに声をかけます。

サンタナ「あんた誰?」

ジョシュ「ジョシュ・コールマン。ラグビー部のキャプテンだ。メンズん中のメンズとして、俺がお前の好みまともにしてやんぜ」

メルセデス「キモいんだよ、さっさとあっち行きな」

ティナ「今すぐ」

ジョシュ「カッカすんなよ、ノーマルにしてやるって言ってんし」

ブリトニー「今もノーマルよ」

クイン「あなたじゃ無理。女に一番モテないタイプのくせに」

ジョシュ「あ、わかっちゃった。お前らみんなレズビアン的な?」

レイチェル「だったら何? どっちにしろ、あんたなんか誰も相手にしないわよ。バイバーイ、とっとと行って」

このやりとりの直後に歌われるのが、ケイティー・ペリーの大ヒット曲『I Kissed a Girl』。

I kissed a girl and I liked it

(女の子とキスしたけどよかった)

The taste of her cherry chapstick

(唇はチェリーの味だった)

I kissed a girl just to try it

(女の子とキスしてみたかっただけ)

I hope my boyfriend don't mind it

(彼氏が気にしないといいけど)

Billboard TOP40』(テレビ神奈川)で初めて『I Kissed a Girl』のPVを観た時、とんでもない才能が現れたと思ってすぐにアルバムを買ったのはいい思い出。

ワン・オブ・ザ・ボーイズ

ワン・オブ・ザ・ボーイズ

 

男性とセックスをすれば好みが「まとも」になるという謎理論は、人類が誕生してから現在までわが世の春を謳歌している男性ならではの傲慢な考えですね。

ラグビー部キャプテンの短いセリフには、ミソジニー、セクシズム(性差別)、同性愛者に対する差別がぎゅっと詰まっています。敬虔なキリスト教徒が同性愛者を認めるか否かの話し合いをする回*1があるんですが、それも短いやりとりの中に問題点がぎゅっと詰まっています。

ちなみに、わたしは女性同士でキスをしろと言いたいわけではありません。キスしても構いませんが。男性が憎悪を向けるのは女性と同性愛者です。世界人口の男女比が半々なら、女性と同性愛者が結束すれば、数の上でとても有利になります。

イッツ・ア・ホモソーシャル・ワールド

ところで、みなさんはホモソーシャルという言葉をご存知でしょうか。ホモソーシャルとは男性だけの秘密の花園のことで、体育会系の運動部、男子校、紳士限定の社交クラブが最たるものです。

「お前の好みまともにしてやんぜ」とほざいたキャプテンも、ラグビー部というイッツ・ア・ホモソーシャル・ワールドに住むジョックです。ジョックとは体育会系男子のことで、スクールカーストの頂点に君臨する存在です。

日本でも体育会系男子はモテますが、アメリカのジョックはローマ皇帝のように強大な力を持っています。また、ホモソーシャルが日の当たる石の表面なら、裏にはミソジニーホモフォビア(同性愛嫌悪)といったダンゴムシがうじゃうじゃと蠢いています。

glee』はスクールカーストの最底辺にいる「負け犬」たちが、「負け犬」たる所以を生かして輝いていく物語です。ジョックが登場人物たちの顔に、スラッシーという毒々しい色をしたフローズンドリンクをかけるいじめが『glee』の名物でもあります。

ジョックの中のジョック、アメフト部のクォーターバックであるフィン・ハドソン(コーリー・モンテース)は、グリークラブに入ったことで「ゲイっぽい」といじめの対象になります。

絶対にマッチョでなければいけないアメリカ合衆国24時。

おそらく、寿命がつきるまでマッチョであると証明し続けなければいけないのでしょう。過度のストレスが過度のいじめにつながるのかもしれません。

そして、自殺をはかるジョックで非オープンリーなゲイの男子生徒。

このように過酷なアメリカで製作されたミュージカルやコメディは、過酷な社会で生き抜くための知恵が満載です。みなさんもぜひ一度ご覧になってみてくださいね。

無駄に長くなってしまったので、続きは次回。

 

 

 

こじらせ男子について詳しく知りたい方はこちらをどうぞ。

misandry.hatenablog.com

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*1:シーズン3第13話「バレンタイン・パーティー!」