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Misandry Blog

ミサンドリー(男性嫌悪)なブログです。

ゴールデンカムイは同性愛差別なのか?

笑う側(強者)と笑われる側(弱者)

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ゴールデンカムイ』とは、週刊ヤングジャンプで連載中の人気漫画のことです。2016年の『このマンガがすごい!』ではオトコ編第2位にランクイン、同年のマンガ大賞も受賞しています。

時は明治。日露戦争に従軍し、「不死身の杉元」と呼ばれた杉元佐一は、日に日に視力を失っていく幼馴染の女性のため、北海道で砂金掘りに精を出していた。ひょんなことから、アイヌの軍資金であった金塊が北海道のどこかに隠されていると知った杉元は、アイヌの少女アシㇼパと共に金塊を探す旅に出る。

1巻の表紙が主人公・杉元、2巻の表紙がヒロイン・アシㇼパさんです。

単行本*1派なので、ラッコ回はまだ読んでいません。「ゴールデンカムイ+ラッコ」で検索すると、「ラッコが原因でとんでもないホモ祭りにwwwwww」「ラッコ肉を煮たらホモ祭りに!」などの、アフィサイトの見出しがトップに来ます。

Amazonでは複数のレビュアーが、同性愛表現や同性愛者を指して「ホモネタ」「ホモ」「変態」という言葉を使っています。

なぜこのようなことが起きるのかというと、ゴールデンカムイではしばしば、同性愛表現や同性愛者が笑いを取るための生贄として読者に差し出されるからです。

4月13日発売の週刊ヤングジャンプに掲載された第115話(ラッコ回)もそうです。ネタバレを踏まない程度に調べましたが、ラッコの肉を煮たことによって密室にいる男性陣がお互いに対してムラムラし出す、という内容だったようです。

実際に性交渉が行われていたら、人気声優・平野綾がバラエティ番組で恋愛トークをした時のように、ヤンジャンや単行本をズタズタにしてWeb上にアップする男性オタクが後を絶たなかったことでしょう。

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http://kotaku.com/5606155/voice-actress-pisses-off-otaku

このブログで何度も説明していますが、男性同士がイチャイチャする世界・ホモソーシャルは、ミソジニー女性嫌悪)とホモフォビア(同性愛嫌悪)を土台にして成り立っています。

処女ではない声優のCDや写真をズタズタにする行為、これがミソジニー。アップした画像を他の男性に見てもらって初めて、1オトコラシサをゲットできます。

ジャンプ編集部の女子トイレのマークを、女性の尊厳を踏みにじるデザインにすることでも1オトコラシサをゲットできます。

shonenjumpplus.com

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『真夏の夜の淫夢*2ネタや『くそみそテクニック*3ネタで盛り上がるのはホモフォビアです。やはり、他の男性にネタを認識してもらって初めて1オトコラシサをゲットできます。

ラッコ回で盛り上がるのもホモフォビア。しかも、ゴールデンカムイ第58話扉絵のアオリは『くそみそテクニック』の有名なセリフのパロディ「殺らないか。」。アオリといい、笑いを取るために生贄として差し出す行為といい、作者の野田サトル氏は率先してホモフォビアを煽っています。

笑うという行為が発生した時点で、人間はおのずと笑う側(強者)と笑われる側(弱者)に分かれます。学校に在籍していた経験がある人ならば、一方的に誰かが誰かを笑う場面に遭遇したことが少なからずあるのではないでしょうか。あるいは、あなたが一方的に笑う側だったり笑われる側だったかもしれません。

政治風刺は権力者を笑うことによって、弱者が強者に強者が弱者になります。この一時的な立場の逆転が、強者はいつまでも強者ではないと弱者に気づかせるきっかけになります。

セクシュアル・マイノリティを気兼ねなく笑えるということは、当事者ではないということです。当事者ではないということは、マジョリティ(異性愛者)であるということです。

笑いを取るために同性愛表現や同性愛者を使用するゴールデンカムイは同性愛差別そのものです。仮に、作者がセクシュアル・マイノリティであったとしても言い訳にはなりません。

-10000オトコラシサ

ただ、ゴールデンカムイが他の男性向け漫画とは違うのもまた事実。まず、ホモソーシャル臭があまりしない。

ゴールデンカムイはアシㇼパさんをのぞいて、レギュラー陣がみな男性です。しかも、主人公の杉元を含め、軍人や元軍人ばかりが出てきます。

ホモソーシャルという世界は、同性から「男らしい」と見なされれば見なされるほど高得点をゲットできます。従って、軍人は1000オトコラシサほどでしょうか。軍に所属している間中、毎日1000オトコラシサです。

当然、誰がより「男」として優れているか競い合いになりそうなものです。しかし、登場人物の中で一番優しさを見せるのは、登場人物の中で一番人を殺しているであろう杉元。

子熊を抱えて「こいつは俺が面倒見るッ」「母親代わりになるんだあ」と言ったり、犯罪者から「優しい!!」と思われたり、「トゥクン…」しながら「恋のお話?聞かせて…」とアシㇼパさんにねだったり。

ギャップによって笑いを取ろうとする意図があることは百も承知ですが、杉元は初めて会った時から、少数民族で女性で子供のアシㇼパさんをさん付けで呼んでいます。女性を品定めすることもありません。ヒロインとはいえ、小学校高学年くらいの年齢であるアシㇼパさんを女として見ていないのも安心できます。

何せ日本は、年端も行かない子供を「女」や「小悪魔」として見る男性保育士が持てはやされてアニメにもなる国ですから。

クソきめぇ。自分が保育園にいた時にこんな保育士がいたら人間不信になってる。

話を戻します。ゴールデンカムイには、女性の見た目で笑いを取るという差別的なネタは出てきますが、サービスとしてアシㇼパさんの入浴シーンが提供されることはありません。登場人物はみな金塊のことしか頭になく、いかにたくさん「女というトロフィー」をゲットするかには興味すらないように見えます*4

セックスをしたいがために見境がなくなるキャラはいます。しかし、そのキャラと親しくなるのは、女装しているとはいえおじいさん。特に笑いを取ろうとしているわけでもありません。

また、ゴールデンカムイにはおっさん2人のカップルが登場します。明らかに笑いを取るための同性愛表現であり同性愛者なのですが、2人はハリウッド映画顔負けの一大ラブロマンスを繰り広げます。北海道の大自然の中、地平線に昇る朝日をバックに、2人で寄り添う見開きページさえ用意されています。

次のページで杉元がオチをつけるため、ただの前フリでしかないのですが、淫夢語やヤマジュン語でキャッキャとはしゃぐ「普通の男性」であれば、おっさん2人のために壮大な見せ場を用意することなどありえないでしょう。

おっさんによる一大ラブロマンスを用意しただけで-10000オトコラシサですから。現にわたしは、男性向け漫画でこのようなラブロマンスを読んだことがありません。

ゴールデンカムイは同性愛差別ではあるものの、明らかに何かが違う。杉元とシリアルキラーによる、セックスのメタファーとしか思えない殺し合い描写もありますし。

大げさな表現に思えるかもしれませんが、このシリアルキラーは杉元の行動に興奮したのち、「ビクンビクンッ」という擬音と共にノーハンドで射精します。巻末のおまけ漫画では、射精しながら大きな声で喘いでいます。初めて読むタイプの作品なので、わたしも少し混乱しています。

しかし、男性とはいえ子供の性器を描くことは本当にやめてほしい。男の子の性器が笑いを取るための道具として使われることと、男性の性犯罪被害者が被害を訴えられないことは一直線でつながっていると思います。

「棋力の低い奴に出番はねえ!」

最後になりましたが、女性がジャンプ編集部から尊厳を踏みにじられていると感じずに読むことのできるジャンプ・コミックスをご紹介します。

その名も『ヒカルの碁』。

ヒカルの碁 全23巻完結セット (ジャンプ・コミックス)

ヒカルの碁 全23巻完結セット (ジャンプ・コミックス)

 

原作者が女性ですので、ヒロインがお色気要因だったり足を引っ張るだけの存在ではありません。むしろ、性別に関係なく「棋力*5の低い奴に出番はねえ!」という清々しいスタイル。

しかも、面白すぎて度肝を抜かれます。ここまで度肝を抜かれる作品はなかなかない。あったら教えて。ゴールデンカムイも面白いんですけど、上述したような理由で定期的にモヤモヤするんですよね。

*1:10巻まで刊行

*2:ゲイビデオ

*3:ゲイ向け漫画

*4:しら……いし?

*5:碁の強さのこと